吉田玉男・文楽

新聞で吉田玉男の訃報を読んだ.ご存知の方もあろうと思うが、「人間国宝重要無形文化財保持者)」、人形浄瑠璃文楽」の人形遣いの人である.「文楽」は大阪が本場の人形劇で人形と三味線にのった義太夫の語りによるものである.地方公演で玉男さんの人形遣いを見たことがあるが、実に品のある人形に息吹を与える素晴らしいものであった.容貌は、亡くなった林家彦六師匠に少し似ているところがあるような気がする.人形は三人で遣うが、主遣いといわれる人は顔を出して人形を遣っている.残念なことである.どのジャンルでもそうだが、亡くなると芸も一緒に持っていってしまう.現在ではビデオやDVDに記録として残るが、生のものであるから、そのときめぐり会えた演技などは一瞬にして消えてしまう.今までにも見たり聞いたりしておいてよかったと思う人々が沢山いる.清元の志寿太夫などもその一人である。歌舞伎にいたっては沢山いて数え上げたらきりがない.『落語』もそうである.文楽志ん生、可楽、金馬、円生、正蔵(彦六)志ん朝、馬生、枝雀などなど、やはり数えきれないほどいる.今を大切に、見聞きできるものは良いものを出来るだけ見ておきたいと思っている.ただし、予算の関係が問題だが.