落語の世界

栃木放送で自分が担当している番組『道楽オヤジ倶楽部』のネタを探そうと本棚を整理していたら『落語の世界』講談社昭和42年7月24日初版発行、柳家つばめ著が出てきた.裏表紙を見ると昭和42年8月11日円朝忌記念に落語の本をと書いてある.これをみると約40年近く前から「落語」を聴いていることがわかる.この本は私にとっての落語入門書であった.後に立川談志著「現代落語論」が多くの噺家を生む原点となったし、落語ファンの愛読書であった.
中学の教師を経て、五代目小さん(先日亡くなった人間国宝になった小さん師、今秋六代目小さんを襲名するのは実子で現在の三語楼師〉に入門したという変わり者.昭和49年に45歳の若さで早逝したが、現在活躍中の柳家権太楼師や私と良く似た夢月亭清麿師は、初めつばめ師に入門したのだ.
この本は、噺家としての入門から、前座修行、(楽屋での仕事から話の稽古〉、二つ目昇進から真打まで、新作、古典について、噺家の収入、師弟関係まで落語界のことを全て網羅してわかりやすく書いてある.最後には「落語辞典」まで着いていて親切な入門書である.当時は速記本はあったが、内輪のことを書いた本は少なかったと思う.
私も現在、落語会を開催したり、お手伝いしているが、この本から得たものが身についている.裏表紙には、寄席のネタ帖があしらわれているが、そこに書いてある出演者も今は故人となった人が多い.小円朝、鯉香、つばめ、猫八、馬の助、美蝶、小さん、富士夫、かつ江、志ん朝正蔵などなど懐かしい人たちばかりだ.最近寄席ブームとか言われているが、一過性のものでなく、日本の伝統話芸『落語』を中心にした『寄席』を大事にしたいと思っている.